数論的関数の用語やその関連について整理したかったので書くことにした.
数論的関数
数論的関数は, 定義域が正整数 Z+ である複素数を値にもつ関数である. すなわち
Z+ から複素数 C への関数
Z+→C
をいう.
加法的関数
加法的関数は
m∈Z+,n∈Z+,gcd(m,n)=1 について
f(mn)=f(m)+f(n) を満たす数論的関数 f(x)
をいう.
e.g.:
- n の異なる素因数の総数 :=ω(n). ω(4)=1,ω(20)=ω(22⋅5)=2,ω(2018)=ω(2⋅1009)=2
- n の異なる素因数の和 :=sopf(n). sopf(1)=0,sopf(4)=2,sopf(20)=2+5=7,sopf(2018)=1011
また
∀m∈Z+,∀n∈Z+ について
f(mn)=f(m)+f(n) を満たす加法的関数 f(x)
を完全加法的関数という.
e.g.:
- n の重複も含めた素因数の総数 :=Ω(n). Ω(1)=0,Ω(20)=Ω(2⋅2⋅5)=3,Ω(2018)=Ω(2⋅1009)=2
- n の重複も含めた素因数の和 :=sopfr(n). sopfr(4)=2+2=4,sopfr(20)=sopfr(22⋅5)=2+2+5=9, sopfr(2018)=sopfr(2⋅1009)=2+1009=1011
乗法的関数
乗法的関数は
m∈Z+,n∈Z+,gcd(m,n)=1 について
f(mn)=f(m)f(n) を満たす数論的関数 f(x)
をいう. 乗法的関数は, 任意の加法的関数 f(n) を用いて簡単に構成することができる. たとえば, 乗法的関数 g(n) を指数法則より g(n)=2f(n) とおくことができる. また, 2 つの乗法的関数 f(n) と g(n) をつかって, h(n)=f(n)g(n) という乗法的関数をおくことができる. より一般化すると,
f(n) が乗法的関数, 和 ∑d∣n で d が n のすべての約数にわたるとき, g(n)=∑d∣nf(d) は乗法的関数であるといえる.
一応これを証明する.
証明1:
n=n1n2, gcd(n1,n2)=1 とすると, n の約数 d は n1 の約数 d1 と, n2 の約数 d2 との積で尽くされる. すなわち gcd(d1,d2)=1 だから
g(n)=∑d∣nf(d)=∑d1∣n1, d2∣n2f(d1,d2)=∑d1∣n1, d2∣n2f(d1)f(d2)=∑d1∣n1f(d1)∑d2∣n2f(d2)=g(n1)g(n2)
◻
e.g.:
- f(n):=gcd(n,k). k=2 としたとき, f(15)=f(3)f(5)=1, f(24)=f(3)f(8)=2
- 指数法則: k∈Z に対する nk
- メビウス関数 :=μ(n). μ(18)=μ(2⋅32)=0, μ(6)=μ(2⋅3)=1,μ(7)=−1.
- オイラーのトーシェント関数 :=ϕ(n). ϕ(6)=ϕ(3)⋅ϕ(2)=2, ϕ(28)=ϕ(4)⋅ϕ(7)=12.
また
∀m∈Z+,∀n∈Z+ について
f(mn)=f(m)f(n) を満たす乗法的関数 f(x)
を完全乗法的関数という1.
e.g.:
- ディリクレ級数 a(n) におけるディリクレの L 関数: L(s,a)=∞∑n=1a(n)ns=∏p(1−a(p)ps)−1,. 自然数全体の総和が素数全体の積に等しい.
参考文献
- Completely multiplicative function 2018 年 7 月 9 日アクセス.
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代数学的な定義でいえば, モノイド(Z+,⋅)から他のモノイドまでの準同型写像である. ↩